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福島地方裁判所郡山支部 平成8年(ワ)91号 判決 1998年3月23日

主文

一  被告らは原告に対し、各自金九二九九万〇六二八円及びこれに対する平成六年四月一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告熊田秀男は原告に対し、金六一九万九一八〇円及びこれに対する平成六年四月一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、原告と被告熊田秀男との間においては、全部被告熊田秀男の負担とし、原告と被告東京海上火災保険株式会社との間においてはこれを三分し、その二を被告東京海上火災保険株式会社の負担とし、その余については原告の負担とする。

五  右主文第一項及び第二項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求(原告の求めた裁判)

一  被告らは原告に対し、各自金一億三〇五六万〇四三七円及び内金一億二七五六万〇四三七円に対する平成六年四月一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  第一項について仮執行宣言

第二事案の概要及び争点

一  本件は、被告熊田秀男(以下、被告熊田という。)運転の普通乗用自動車によって運転操作を妨害され、その結果交通事故を惹起させられ傷害を負った原告が、その蒙った損害の賠償を、被告熊田には不法行為責任があるとして、被告東京海上火災保険株式会社(以下、被告会社という。)には被告熊田が加入していた自動車総合保険契約に基づく保険金の支払義務があるとして、それぞれ請求した事件である。

二  争いのない事実及び証拠上あるいは弁論の全趣旨から容易に認定しうる事実

1  平成六年四月一日午後一一時一四分ころ、福島県須賀川市大字仁井田字大谷地五五五番地先の路上において、被告熊田がその所有する普通乗用自動車を運転中、原告が運転する軽乗用自動車(原告の父親である訴外青木広之所有)にパッシングされたとして、被告熊田が同所に右軽乗用自動車を停止させ、その運転席ドアを蹴りつけた。

2  そのため逃走した軽乗用自動車を被告熊田は普通乗用自動車で追尾し、これに追いつくや、軽乗用自動車の右側に自車を接近させて並進させたり、高速度で追い立て、パッシングをしてあおる等しながら約四・五キロメートルにわたり走行を続けた。

3  そのため、原告は郡山市安積町笹川字高瀬三五番地付近の右カーブにおいて的確なハンドル、ブレーキの操作ができず、軽乗用自動車を右前方に滑走させて石塀に衝突させた(以下、本件事故という。)。

4  本件事故により、原告は頭部外傷、頭蓋骨骨折、脳挫傷、外傷性クモ膜下出血等の傷害を負った。

5  原告は、自賠責保険から、三一二〇万円(内後遺障害については三〇〇〇万円)、被告熊田から、一一四万二五一四円の支払いを受けている。

6  被告熊田は、本件事故を惹起させたということで、原告及びその同乗者に対する傷害罪及び道路交通法違反(飲酒運転)により、懲役三年六月の実刑に処せられた。

三  争点

1  原告は、

(一) 本件事故は、被告熊田が前記2のような運転をしたことにより原告の運転操作を妨害したことによるものであるから、被告熊田には不法行為に基づく損害賠償責任がある。

(二) 被告会社には被告熊田が加入していた自動車総合保険契約に基づく保険金の支払義務がある。

と主張、原告は前記傷害に加え、中枢性両側性片麻痺、両側性外転神経麻痺、顔面神経麻痺、中枢性構音障害等の後遺障害を負ったとして、損害として

治療費 一一一万三三六四円

入院付添費 二二五万六〇〇〇円

入院雑費 四八万八八〇〇円

(入院期間三七六日)

車椅子レンタル、装具等費用 四三万一七二六円

休業損害 二五八万六八八〇円

(年収二五一万一三三六円の三七六日分)

入院慰謝料 二〇〇万円

後遺障害慰謝料 二六〇〇万円

(自賠責法施行令二条の後遺障害別等級表第一級三号に該当)

逸失利益 五九一〇万一七八一円

(労働能力喪失一〇〇パーセント、就労可能年数四六年、年収をもとに新ホフマン係数で算出)

将来の介護料 五九九〇万七四五〇円

(平均余命六〇・八八年、一日あたり六〇〇〇円として新ホフマン係数で算出)

車両の損害(全損) 九五万円

レッカー移動費用 六万六九五〇円

家屋改築費用 五〇〇万円

(改築費用二七八一万円の内金として請求)

弁護士報酬 三〇〇万円

以上合計一億六二九〇万二九五一円

を主張、既払分三二三四万一五一四円を控除した一億三〇五六万〇四三七円を請求する。

2  これに対し被告熊田は、

(一) 本件事故についての事実関係は認めるが、故意に生ぜしめたものではない。

(二) 原告の損害については入院付添費、入院雑費、レッカー移動費用を認め、その余についてはこれを争う。

と主張、

3  被告会社は、本件事故による原告の損害は被告熊田の原告に対する傷害の故意により生じたものであるから、自動車総合保険普通保険約款第七条一項一号(以下、免責条項という。)に該当し、保険会社は保険金の支払義務を負わない。

と主張、ともに原告の請求を争う。

4  原告は、免責条項にいう故意によって生じた損害の解釈にあたっては、免責条項によって保険者が例外的に保険金の支払いを免れる範囲がどのようなものとして合意されているのかという保険契約当事者の意思解釈の問題としてとらえるべきであり、右条項が保険者の免責という例外的な場合を定めたものであることを考慮に入れつつ、予期しなかった損害の賠償責任の負担という結果について保険契約者、記名被保険者等の故意を理由とする免責を及ぼすのが一般保険契約当事者の通常の意思であるといえるか、また、そのように解するのでなければ免責条項が設けられた趣旨を没却することになるかという見地から当事者の合理的意思を定めるべきであるとして、

(一) 被告熊田は、交通事故を生じさせ傷害を与えることは予見していたが、原告が生涯にわたる後遺障害に苦しめられるとは予見していなかった。

(二) 被告熊田には損害賠償能力がなく、加害者に傷害の故意があり、被害者が死亡せず原告のような状態になった場合に免責条項が適用されることになれば、信義則に反するうえ、保険制度の趣旨と矛盾した結果が生じる。

(三) 自動車保険(任意保険)に加入するのは、今日自賠責保険だけでは被害者に対する補償を全うできる車両保有者がほとんどいないことに鑑みれば、資力の点で被害者に対する自らの責任を全うできるように備えておくためであり、その意味で被害者救済のための保険であるという社会的意義がある。

(四) 原告の論旨とほぼ同様の論旨で、「加害者に傷害の故意しかなかったのに被害者が死亡したという予期しなかった結果が生じた場合には、傷害と死亡とでは通常その被害の重大性において質的な違いがあり、損害賠償責任の範囲において大きな差異があるから、かような場合についてまで保険契約者、記名被保険者等が自ら招致した保険事故として免責の効果が及ぶことはない、とするのが一般保険契約当事者の通常の意思に沿うものというべきであるし、このように解しても一般に損害保険契約において免責条項のような約款が定められる趣旨、すなわち、故意によって保険事故を招致した場合に被保険者に保険金請求権を認めるのは保険契約当事者間の信義則あるいは公序良俗に反するものである、という趣旨を没却することになるとはいえない。」とする最高裁判所の判決(平成五年三月三〇日第三小法廷判決、民集四七巻四号三二六二頁)があるところ、本件のような場合には死亡していないから免責条項が適用されると解すると、原告が死亡してから訴訟を起こさねばならないこととなり、かような差別的な扱いをすることは憲法一二条、一三条、二九条に反するものである。

と反論する。

5  これに対し被告会社は、

(一) 右最高裁判決は、明らかに傷害の故意しかないのに拘わらず死亡の結果が発生した場合にその死亡の結果について免責条項の適用がないとするもので、被保険者の故意が及んでいない範囲については免責条項は適用されないが、故意が及んでいた範囲については免責を認めるもので、本件においては、被告熊田は少なくとも傷害の故意をもって、本件傷害の結果を発生させており、後遺障害も傷害の結果の残存傷害であり、区別すべき理由はないから、かような立論に立ったとしても、免責条項が適用される。

(二) 仮に原告が主張するように、免責条項が原告の後遺障害に関して適用されないとしても、その余の狭義の傷害に基づく損害及び物的損害については免責条項が適用され、さらに、その場合、原告は平成七年五月から損害基礎年金額九八万一九〇〇円、障害厚生年金年額四四万一三〇〇円を受給しているので、本件口頭弁論終結時までの既受領分は損益相殺により逸失利益から控除すべきである。

と再反論する。

6  したがって、本件における争点は、

(一) 本件事故は被告熊田の故意によるものか否か。

(二) 被告会社は免責条項により免責されるか。

(三) 被告らが責任を負う場合、原告の損害額はいくらか。

であるということができる。

第三証拠

証拠関係は、本件訴訟記録中の証拠関係目録記載のとおりである。

第四当裁判所の判断

一  本件事故は被告熊田の故意によるものか。

1  甲一号証ないし四五号証(枝番号のあるものはそれを含む。)、五四号証、乙一号証ないし二三号証、被告熊田の本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 被告熊田が原告の軽乗用自動車を追尾し、その右側に自車を接近させて並進させたり、パッシングをしてあおる等しながら走行していた際の速度は時速一〇〇キロメートルを超えていた。

(二) 右走行中、被告熊田は、軽乗用自動車がT字路を左折する際に大きくふくらんで反対車線はみ出したのを見て、そのまま向こう側の土手に突っ込むか、土手下の用水路に落ちるのではないかと考え、ヒヤッとした。

(三) 当時、被告熊田は、事故を起こすように仕向けてやれとか、ぶつけてでも止めてやろうとかという考えは抱いていなかったものの、右(一)のような形で追いかけることによって、運転を誤って事故を起こすかもしれないという危機感や恐怖感を相手に感じさせ、その結果相手が怖がって車を止めればそれでいいし、逆に相手が逃げ続けてその結果万が一本当に事故になって怪我をしたとしても、止まらなかった相手が悪いのだからそれはそれでかまうものかという気持ちであった。

2  前記争いのない事実及び以上の認定事実によれば、本件事故については、被告熊田が原告の軽乗用自動車が事故を起こしてもやむを得ないと考えていたこと、双方の車両の当時の速度や走行状態、原告の車両が軽乗用自動車であることを考慮すれば、被告熊田には、原告が運転操作を誤って事故を起こし、その場合傷害を負うであろうことを十分に認識していたものというべきであり、本件事故は被告熊田の故意によって惹起されたものというべきである。

したがって被告熊田には故意に基づく不法行為責任がある。

二  被告会社の支払義務はどうか。

1  思うに、免責条項が設けられた理由は商法六四一条の規定が根底にあるものと解されるところ、行為あるいは結果についての責任を追及する刑事法と異なり、生じてしまった損害の公平な分担を目指す不法行為法においては故意と過失という主観的要素によってその法律効果に差異が設けられていないにもかかわらず、損害保険において主観的要素に基づいた商法六四一条のような規定や本件のような免責条項が設けられている趣旨は、故意によって保険事故を招致した場合に被保険者に保険金請求権を認めるのは保険契約当事者間の信義則あるいは公序良俗に反するものであるという保険契約当事者間の合理的意思にあると解される。

してみると、免責条項が約款に設けられた趣旨は、免責条項によって保険者が例外的に保険金の支払いを免れる範囲がどのようなものとして合意されているのかという保険契約当事者の意思解釈の問題としてとらえるべきであるという原告の立場に沿ってこれを解釈するのが相当であり、免責条項が保険者の免責という例外的な場合を定めたもであることを考慮に入れつつ、予期しなかった損害の賠償責任の負担という結果について保険契約者、記名被保険者等の故意を理由とする免責を及ぼすのが一般保険契約当事者の通常の意思であるといえるか、また、そのように解するのでなければ免責条項が設けられた趣旨を没却することになるかという見地から当事者の合理的意思を定めるべきである。

2  そこで案ずるに、不法行為責任を負う加害者が本来負担すべき損害賠償責任を保険によってカバーするという反倫理性を有する責任保険が現在社会的に認知されているのは公知の事実であると思われるところ、その理由は原告が主張するように被害者保護の機能を有しているからにほかならないのであって、酩酊運転等による保険者の免責条項が自損事故について存在し、対人賠償の場合には外されていることや、いわゆる任意保険の約款において被害者の直接請求制度が認められているのはその現れであるというべきである。そして、自動車が広く一般に普及している社会状況やその結果交通事故が社会問題となっている現状、自賠責保険では被害者の損害を十分に補償できず、いわゆる任意保険がその不足分をカバーすべく大多数のドライバーがこれに加入している現状を考慮すれば、責任保険は予想できない(まさか)の事態に備えるべく発展し、利用されて来たということができるのであって、この見地から保険契約当事者の合理的意思を検討すれば、加害者である被保険者において予期しなかった結果が生じた場合、すなわち加害者である被保険者が傷害の故意を有していたとしても、死亡した場合あるいはこれと同視しうるような傷害とは質的に異なると評価することができ、損害賠償責任の範囲にも大きな差異が生じる重大な結果が発生した場合についてまで保険者を免責するものではなく、生じた損害から加害者において予想し、あるいは予想し得た損害についてのみ免責する趣旨であると解するのが一般の保険契約当事者の意思であるというべきあり、かように解することで保険契約当事者間の信義則あるいは公序良俗に反するものを除外する免責条項の趣旨が没却されることもなく、むしろ前記した社会状況に鑑みれば公序良俗にも合致するものと考える。

したがって、被告会社は、被告熊田が予想しあるいは予想し得た損害についてのみ免責され、その余の損害については保険金の支払義務を負う。

三  本件において被告熊田が予想しあるいは予想し得た損害は何か。

1  被告熊田は原告に対する傷害の結果を認識していたとはいえ、原告が重大な後遺障害を負うことまでは認識していなかったものである。

2  そして、本件事故当時の双方の車両の速度や走行状態、原告の車両が普通乗用自動車に比して安全性の低い軽乗用自動車であることを考慮すると、被告熊田は原告が相当の傷害を負うことまで当然に予想し得たというべきである。

3  してみると、原告の主張する損害中、治療費、入院付添費、入院雑費、休業損害、入院慰謝料、車両損害、レッカー移動費用については、被告会社について免責の対象となるというべきである。また、車椅子レンタル、装具等費用については、装具については退院後も使用し続けるものであることに鑑み、入院中の車椅子レンタル費用のみが免責の対象となるというべきである。

四  原告の損害額はいくらか。

1  治療費については、甲四六号証の一ないし四から、一一一万三三六四円となる。被告熊田は、原告が稼働していた福島交通健康保険組合からの立替金請求がなされているとして支払義務を否認する旨主張するようであるが、右金額は甲四六号証の二から明らかなように原告の個人負担分であるので、かかる主張は認められない。

2  入院付添費については、原告の年齢や受傷の程度に鑑み、入院期間三七六日全てについて一日あたり六〇〇〇円、合計二二五万六〇〇〇円が相当である。

3  入院雑費についても、三七六日分、一日あたり一三〇〇円、合計四八万八八〇〇円が相当である。

4  車椅子レンタル費用については、甲四七号証の一ないし六から、二九七〇〇円、装具等費用については甲四八号証から三四万八七六六円が相当である。なお、甲四九号証一ないし七の支出については何の費用かについての立証がなされていないところ、入院中の病院関係の定期的な支出と解されることから、入院雑費として評価されるべきものと考える。

5  休業損害については、甲五〇号証から、当時の原告の年収二五一万一三三六円をもとに、三七六日分、二五八万六八八〇円とするのが相当である。

6  入院慰謝料については、入院期間が三七六日であることから、原告の請求額どおり、二〇〇万円とするのが相当である。

7  後遺障害慰謝料については、前記争いのない事実及び甲五一号証の一、二、証人青木広之の証言から、原告が本件事故により中枢性両側性片麻痺、両側性外転神経麻痺、顔面神経麻痺、中枢性構音障害等の後遺障害を負ったものということができ、右後遺障害は自賠責法施行令二条の後遺障害別等級表第一級三号に該当するものと言うことができることから、右後遺障害の程度に鑑み、原告の請求額どおり、二六〇〇万円とするのが相当である。

8  逸失利益については、前記後遺障害の症状に鑑み、労働能力喪失一〇〇パーセント、原告の就労可能年数四六年として、本件事故当時原告が入社二年目であったことから、将来の昇給を考慮し、平成六年版賃金センサス第一巻第一表の女子労働者の産業計、企業規模計、学歴計、平均賃金額年額三二四万四四〇〇円を基礎に、中間利息の控除についてはライプニッツ式でこれを算出するのが相当であり、四六年のライプニッツ係数は一七・八八〇〇であるから、五八〇〇万九八七二円となる。

ただし、郡山社会保険事務所に対する調査嘱託の結果から、原告は平成七年五月から障害基礎年金年額九八万一九〇〇円、障害厚生年金年額四四万一三〇〇円を受給しているので、本件口頭弁論終結時である平成一〇年二月一六日までの受給額を損益相殺として控除すべきであり、右受給額はそれぞれ月額八万一八二五円、三万六七七五円であるから、三三箇月分、合計三九一万三八〇〇円を控除した五四〇九万六〇七二円が原告の逸失利益ということになる。

9  将来の介護料については、証人青木広之の証言から、原告が排便の介添えが必要であること、食事は自分でスプーンを使用してこれを摂ることができること、車椅子での移動も可能であることを考慮し、平均余命に至るまでの六〇年間、一日あたり五〇〇〇円として、中間利息の控除についてはライプニッツ式でこれを算出するのが相当であり、四六年のライプニッツ係数は一八・九二九二であるから、三四五四万五七九〇円となる。

10  車両の損害については、原告の運転していた軽乗用自動車が原告の父親である訴外青木広之の所有であるから、原告の損害であるとは認められない。

11  レッカー移動費用については、原告の運転していた車両の移動費用であるから、本件事故と相当因果関係のある損害として原告の損害と認めるのが相当であるところ、甲五二証の一及び証人青木広之の証言から、六万六九五〇円が相当である。

12  家屋改築費用については、前記後遺障害により原告が生涯車椅子で生活せざるをえないと思われ、それには自宅の改築必要であること、証人青木広之の証言から家屋の改築が終われば原告が退院できる情勢が整うものと思われること、甲五三号証の一から、改築費用の見積が消費税別で二七〇〇万円であり、そのうちの相当部分が原告のための出入口、トイレ、風呂場、寝室等のための費用であることから、原告の請求額どおり、内金として五〇〇万円を認めるのが相当である。

13  以上を合計すると、一億二八五三万二三二二円であり、原告の主張する弁護士費用三〇〇万円は本件事故と相当因果関係を有する損害と言えるから、原告の損害額は合計で一億三一五三万二三二二円ということになる。

五  以上から、被告熊田は右合計額から既払分三二三四万二五一四円を控除した九九一八万九八〇八円について原告に対し損害賠償責任を負う。

被告会社については、前記四の4の装具等費用、7ないし9、12及び弁護士費用(原告の主張する三〇〇万円の弁護士費用は、被告会社が支払義務を負うべき損害額の請求においても相当額であるということができる。)について保険金の支払義務を負うから、右合計額から後遺障害についての既払分三〇〇〇万円を控除した九二九九万〇六二八円について被告熊田と連帯して支払義務を負う。

六  したがって、右金額を求める限度で原告の請求をそれぞれの被告について認容し、その余の請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担については民事訴訟法六一条、六四条、仮執行の宣言については同法二五九条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 野口忠彦)

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